次世代看護教育研究所(RINGNE)では研究成果を基にした新たな看護技術を実践で活用するための教育コンテンツを展開しています。

ここでは、研究を基にした次世代看護技術を紹介します。

高齢者の上肢スキン-テアのリスクアセスメントツールについてはこちら

看護を変える新しいフィジカルアセスメント

―エコー(超音波)を活用した DX 時代の看護実践と教育―

近年、看護の現場では 患者の状態を「より正確に」「より負担なく」「その場で」把握することがこれまで以上に求められています。高齢化が進む日本において、排尿・排便、循環、嚥下、褥瘡などのケアはますます複雑化し、従来の視診・触診・聴診・打診・問診だけでは判断が難しい場面が増えています。

こうした課題を解決する新たなフィジカルアセスメントとして注目されているのが、エコー(超音波)を用いた看護アセスメントです。

エコーが看護を変える理由:見えなかった身体内部を「リアルタイムに可視化」する

エコーは、身体に超音波を当てて反射を画像化する技術です。
痛みも侵襲もなく、その場で結果が分かるため、ベッドサイドでの迅速な判断が可能です。

  • 膀胱内の尿量
  • 直腸内の便貯留
  • 血管の走行・太さ
  • 褥瘡の深さや組織の状態
  • 誤嚥の有無

など、従来は経験や推測に頼ってきた情報が、客観的な画像として確認できるようになります。

スマートフォン時代の“持ち歩けるエコー”

近年はスマートフォン・タブレットとワイヤレス接続する小型プローブが普及し、

  • 画質向上
  • 小型軽量化
  • 低価格化

が一気に進みました。
「看護師一人1台で使える時代」が現実的になりつつあります。

AI による読影サポートで初心者でも安心

当研究チームは、企業と連携し、エコー画像をAIが分析して異常領域に自動着色する技術を開発しました。
これにより、初心者でも血管や膀胱、便塊などを迷わず判断でき、正確な看護判断の実現を後押ししています。これまで研究・教育で標準化してきた“看護に使えるエコー”の代表例をご紹介します。

1. 排尿アセスメント

残尿量の測定や尿閉の評価、水腎症の早期発見など、排尿ケアに欠かせない情報が得られます。

2. 排便アセスメント

直腸内の便貯留を分類し、適切な摘便・緩下剤・排便ケアにつなげられます。AI による便性状の推定も可能です。

3. 嚥下アセスメント

誤嚥のリアルタイム検出や咽頭残留の把握が、エコーで非侵襲的に行えます。

4. 末梢静脈カテーテル・点滴

血管の深さ・太さ・圧迫での虚脱を確認し、失敗を減らす穿刺部位選択ができます。AI による血管自動計測機能も実装済みです。

5. 褥瘡アセスメント

皮下組織の損傷や深部損傷褥瘡(DTI)の早期発見、創周囲組織の変化を客観的に評価できます。

研究から臨床へ ― 看護DXが生み出す未来

エコーとAIを組み合わせた看護アセスメントは、以下のような未来につながります。

  • 必要なケアを“確実に”見極められる看護へ
  • 患者の負担を最小限に抑えた安全なケア
  • 看護師の経験差を超えた標準化された判断
  • 働き方改革にも直結する効率的なアセスメント
  • 在宅医療の質向上とケアの個別最適化

2025年に公表された看護学教育モデル・コア・カリキュラムでは、エコーを用いた直腸観察、膀胱観察が必須の項目となりました。これはすなわち、今後看護基礎教育でエコーの使い方を学んだ看護師が現場に出ていくことを意味します。

しかし現場での普及には、「初期導入コスト」「教育体制」「評価指標」など、乗り越えるべき課題もあります。
私たちは、研究成果・教育プログラム・AI技術を組み合わせ、エビデンスと実践のギャップを埋める仕組み作りを進めています。これらの標準化手技は、次世代看護教育研究所が提供する E-learning や技術講習、認定試験として展開され、4,000人以上の看護師が受講しています。ぜひ、当研究所が提供する新しい看護ケアを体験してください!