次世代看護教育研究所(RINGNE)では研究成果を基にした新たな看護技術を実践で活用するための教育コンテンツを展開しています。

ここでは、研究を基にした次世代看護技術を紹介します。

高齢者の上肢スキン-テアのリスクアセスメントツール(ダウンロードはこちら

スキンテアとは?

スキン-テアとは、加齢や疾病、治療などにより脆弱化した皮膚に外力がかかって生じる外傷です。浅い皮膚欠損ではあるものの、強い痛みを伴うばかりでなく、看護や介護行為の中で生じることも多く、予防を図ることが重要です。

腕にできたスキン-テア

何が問題?リスクアセスメントの限界

これまでスキン-テアのリスクファクターに関する研究は主に欧米諸国で行われており、日本からの報告はほとんどありませんでした。また、リスクファクターには日本人高齢者ではほとんど見られない弾性線維症などが含まれているため、日本独自のリスクアセスメントツールの開発が求められていました。そこで高齢者の皮膚を縦断的に追跡する観察研究を実施しました。

新しい日本人高齢者向けの発生予測スケール

ここで紹介するリスクアセスメントツールは前腕のスキン-テアを対象としています。これは、欧米諸国と異なり日本人高齢者ではスキン-テアの大部分が前腕に発生するためです。私たちの研究(Minematsu et al., 2021)によって前腕のスキンテアに関連する要因として、老人性紫斑ドライスキン偽瘢痕、および拘縮が挙げられ、中でも老人性紫斑とドライスキンの寄与が大きいことが分かりました。そこでこのツールでは、第1段階で老人性紫斑とドライスキン、第2段階で偽瘢痕と拘縮の有無を評価することとしました。

第1段階では、2つの所見がある場合は「ハイリスク」に分類されます。いずれか一つの所見だけを持っている場合には第2段階に進み、どちらもない場合にはリスクは低いと評価してアセスメント終了とします。

第2段階では、偽瘢痕と拘縮どちらもある場合には「ハイリスク」と評価されます。一方、観察される所見がないばあい、または1つの場合には「リスクあり」に分類されます。

「リスクあり」の場合、皮膚の脆弱性を改善するために皮膚の保湿ケアが推奨され、「ハイリスク」の場合には、皮膚の保湿ケアに加えてアームカバーやベッド柵カバーなどを用いて積極的に皮膚を保護することが推奨されます。(2021年3月5日)

参考文献:Minematsu T, Dai M, Tamai N, Nakagami G, Urai T, Nakai A, Nitta S, Kataoka Y, Kuang W, Kunimitsu M, Tsukatani T, Oyama H, Yoshikawa T, Takada C, Kuwata M, Sanada H. Risk scoring tool for forearm skin tears in Japanese older adults: A prospective cohort study. Journal of Tissue Viability. 2021. doi: https://doi.org/10.1016/j.jtv.2021.02.010